2010年05月06日

「きれいな欧文書体とデザイン」 ちょっとだけメイキング-18

「紙の色にも一年」。


僕は基本的に物事をスパッと潔く決めることができません。
「悩んで、迷って、考えて」を何度か繰り返して、
もう心身ともにフラフラになって物事を決めていきます。

今回、制作期間が長かったこともあり、この「悩んで、迷って、考えて」を
エンドレスで繰り返していくことになりました。

そんな中、最も長く悩んだのが「本文用紙の色」です。
まぁ、できあがってみると、そんなに悩まなくても、、、と思うのですが。。


今回、この本がはじまる際に、ひとつ自分に課していたことがあります。
それは「人の意見を聞こう」です。

これだけ聞くと、なんて立派で謙虚な人だろうと感心してしまいます。

でも、実際は大きく違うんです。
数年前にやった編集者Yさんとの仕事で、
力が入りすぎて「暴走した」という過去があるためなんです、、、


しかし、そんなステキな心がまえも、早々につまづくことになります、、、


ある打ち合わせで、本文用紙に何を使おうかという話になりました。
すると、Yさんが言います。
「クラシカルな書体の本なので、本文用紙も真新しい白いものじゃなく、
クリーム色のものを使いませんか?」と。

今、こうして文章を書いていると
「あぁ、なるほど!それでいきましょう!すばらしいアイデアだ!」と
膝を打って絶賛したくなりますが、
この話を聞いた時点の僕の反応は
「え〜〜〜クリーム色ですか? う〜〜〜ん、、、」でした。

というのは、ここ数年、用紙の色といえば、
白が映えることを意識して、
「ホワイト」もしくは「スノーホワイト」を選択していました。
そのため自分の中に「クリーム色」という選択肢はないわけです。

また、今回の本は「クラシカルな書体を紹介しつつも古典的になりすぎず、
『現代的な雰囲気』をあわせ持った本にしたい」との思いがあります。

そのため、用紙の色は、やはり現代的な「白」がいい。
しかし「人の意見を聞こう」と自分自身に課してしまっているわけです、、、
そんなわけで『葛藤の一年』が幕を開けます。


まずは「少し考えてみます」と持ち帰り、しばらく悩みました。
悩んだ結果、「うん、人の意見にのってみよう」との結論に達し、
「クリーム色でいきます」と返事をしました。

我ながら、すばらしい心がけです。
潔すぎてびっくりです。



まぁ普通だったら、これで話は終わるわけです。


しかし、その後、ずっと悩み続けます。
「本当にクリーム色でいいのか? 今ならまだ変更がきくぞ」
「自分は妥協してるのかもしれない? やはり自分の意見を通すべきじゃないか」
「できあがった時に、気にいらなかったら取り返しがつかないぞ」
などなど、もう頭の中、いろいろ巡っちゃうわけです。

たかが、紙の色ですが、全体のイメージを大きく左右するものなので、
やはり、選ぶ時にはものすごく慎重になるわけなんです。

Yさんからも、そんな僕の状況を見るにみかねて
「まだ紙色変えられますから」と、やさしい声をかけて頂きながら、
1年が過ぎた頃、ようやく心が決まります。
「クリーム色がいい」。


本を開くと、やわらかなクリーム色の用紙が使われている背景には、
実は過去の失敗と、そんな長い長い葛藤があったのでした。
posted by Happy and Happy at 23:00| メイキング「きれいな欧文書体とデザイン」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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