Yさんから言われた言葉から、
再度、カバーのデザインを組み立て直していきました。
そして、できたのが↓これ。

当初は、それぞれの書体名を小さく入れ、
文字には特殊加工をしようと考えていました。
また、宣伝の言葉をいれるための「帯」もつける予定でした。
けっこう、まじめな表情です。
↓帯をはずすと、書体名がエンボスになる構想でした。

この方向で基本的なOKが取れ、
さらにもう一工夫してみようとの話になり、
試行錯誤をつづけます。
そして、悩んで悩んで悩んだ結果、
装飾的な要素をすべて捨てることに決めました。
帯なし。宣伝コピーなし。英文の文字もなし。
「タイトル、色、図形」。
この最低限の要素のみで構成することを決め、
現在のシンプルなカバーデザインがうまれました。
やわらかなクリームイエローは、
ヨーロッパのクラシカルで洒落たイメージをモチーフにしています。
そして、タイトルはあえて、左下に配置することで、
「文字」にとって大切な「余白」をより際立たせるようにしました。
小さな2つの丸は、「過去の優れた書体と、これからのデザインをつなげたい」
という思いを込めています。
ちなみに、この本のカバーは、全て「特色」を使っています。
通常の印刷だと色が少し濁ってしまうため、
発色の美しさや、透明感に限界があります。
そのため、今回は「特色のインク」を使って印刷してもらうことで、
通常のカラー印刷では出せない、美しい色にしていただきました。
直径1ミリ程度の小さな丸い図形にまで、それぞれ特色を使うという
なんとも贅沢な印刷になっています。

デザイナーになって、17年。
ようやくできあがった一冊です。